成人年齢が18歳に。2022年4月から
6月13日、正式に法改正が決まりました。いよいよ4年後の2022年4月より成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられます。
いろいろな議論や課題が残されておりますが、ひとまず成人の定義が18歳になります。
今の18歳は?
現在18歳は未成年者として法的には保護下にあると考えられます。法定の代理人である親御さんによって未成年者取消権などの定めがあるので、現状「一人では契約させてもらえない」ということで実質的な保護がかかりますし、かりに契約をさせられても後日親によって取り消しできるというような状態にあるわけです。
ただ一部の権利は先倒しで進んでおり、選挙権が18歳に引き下げられて先に始まっていることは皆様ご存知のことと思います。
諸外国の成人年齢は?
法務省で調査結果をまとめたものが公表されております。
http://www.moj.go.jp/content/000012471.pdf
私法上の成人年齢で見てみますと、主な国では
- アメリカ~州により異なるが18歳が37州、19歳が2洲、21歳が1州
- イギリス~18歳
- イタリア~18歳
- オーストラリア~18歳
- スペイン~18歳
- タイ~20歳
- 大韓民国~20歳
- 中華人民共和国~18歳
- ドイツ~18歳
- ニュージーランド~20歳
- フランス~18歳
- ロシア~18歳
- モロッコ~20歳
など18歳で私法上の成人とする国が多くなっております。
引き下げの理由などで「選挙権年齢」を引き下げたことがきっかけになったなどの理由も多く見受けられます。
また、昨今の時代背景で年齢による心身の成熟が早くなったなどの理由もあります。
思えば、日本では14,5歳で元服と言って初陣など飾っていたわけですし昔の歴史を見ていけばさらに若かった時代などもあったわけです。
18歳に下がると何が変わるのか?
私法上の成人は簡単に言えば自分一人で契約行為をできるようになるといえます。
それまで一人で変えなかった携帯電話を買えるようになる。車を買えるようになるなど法律的な行為を自己責任で行うことができるようになるわけです。
ところが、ここで問題点がでてきますが、現在の20歳成人でも20歳そこそこの人をだましていく悪質商法被害は後を絶ちません。
つまり、若年成人という社会経験の浅い方をターゲットにする悪質商法は多々存在するという実態があるわけです。
国民生活センターのデータでは、2011年度の18歳~19歳の平均値は5222件、20歳~22歳の平均値は8223件、2012年度の18歳~19歳の平均値は4885件、20歳~22歳の平均値は7902件、2013年度の18歳~19歳の平均値は5731件、20歳~22歳の平均値は8328件、2014年度の18歳~19歳の平均値は5905件、20歳~22歳の平均値は9075件、2015年度の18歳~19歳の平均値は5747件、20歳~22歳の平均値は8935件、2016年9月30日までの18歳~19歳の平均値は2353件、20歳~22歳の平均値は3544件というデータが発表されています。
若者に特徴的な商法は?
若者にトラブルが多い商法はいくつもあります。主なものを上げますと
マルチ商法~人を誘うをマージンが入っていく連鎖型の取引
デート商法~異性の魅力を使って売りつける。
情報商材~これをやれば儲かると思い込ませて商品を販売する。
競馬投資商法~SNSなどでサクラを送り込み、呼び出したら高額な商品を売りつける。
モデル商法~スカウトにかこつけてオーディションに呼出し全員合格。その後、必要だからとレッスン費用など請求する。
エステトラブル~お試し価格などで店に出向いたら勧誘されて高額なエステ契約をする羽目になる。
キャッチセールス~街中で声掛けをされてお店に入ったらその場で高額商品を販売されてしまう。
アポイントメントセールス~販売目的を隠されて呼び出されたらその場で勧誘されて契約に
などなど多数存在します。
若年被害を減らすには?
現在の18歳というと、大学生か高校3年生の年頃になります。受験勉強で忙しい、または高卒で就職する方は就職活動や就職1年目で忙しいなどもあるかと思います。
しかしひとたび成人年齢が引き下げられたら、誰しも平等に成人者として扱われることになります。その時に必要なのは受験勉強の知識でもなく、活きた社会の知識を持つことです。
消費者庁でも教材を作って啓発活動をしております。社会への扉
学校教育でもこれまで以上に、若年成人者への悪質商法被害を防ぐ努力が必要と考えられます。
18歳の若者に!
悪質商法の勧誘者はおいしい言葉を騙って近寄ってきます。そこで
- 世の中においしい話はない
- 誰でも儲かるビジネスなどない
- 消費者金融で金を借りろなど論外!
- 昔の友人、知人など友達からのおいしい話は要注意!
- 成人だといっても、親には相談すること!
契約をするということは、婚姻届けにサインをするようなものだとよく私は説明します。
結婚した後に、この人のあそこが気に食わない、悪いところだ、別れたいなど解ったとしても容易に別れることはできません。
被害に遭わない最大の防御は、契約する前に「よく調査、吟味」することです。
いったんしてしまった契約をなくすことは容易ではありません。その場ですぐ契約は絶対にしないことです。
社会への提言
諸外国の18歳成人年齢の理由を見ると、心身ともにこの年齢ならば大人なのだという理由づけも多く見受けられますが私は決してそうとは思いません。体は確かに成人となると思いますが、果たして心は大人なのでしょうか?
若年成人に対しての保護はまだまだ必要だと私は思っています。なので飲酒、たばこ、ギャンブルなどの20歳維持は当然のことと思います。
また、消費者教育といった点でもこの年齢層は受験勉強などの知識に偏重し、社会的な知識勉強は不十分であると思います。ですのでこの不十分なところを今後4年間で少しでも埋める努力が必要です。
それには、教育する側の意識の改革、知識入手、勉強の努力。まずは教育者の意識を変えること。知識を増やすこと。そこには実務家の協力も必要不可欠でしょう。消費者トラブルは現実世界の話なので、教科書の中の話ではありません。教師は素晴らしい方が多いですが法実務を実際に行ったことのある教師はまずいないでしょう。
まずは実務家が教育界へ入っていきタッグを組むこと。そして今そこにある現実を直視しすぐに行動を起こすこと。
次に生徒たちの意識改革を行っていくことと共に、実例で少しでも知識を持つこと。少なくとも相談先の188など相談先の知識だけでも周知を徹底していくこと。
また、消費者金融などで複数社借りさせて100万円近いローンを抱えるトラブルも増えております。(特に投資系、情報商材系)
よって、消費者金融などの借り入れ上限などに一定の規制をかけること。
クレジットカードも複数枚で小分けに切って、自分の信用力以上を決済させることもあるのでこのあたりの決済的な面での措置が必要ではないか?
業者も、法的には成人ではあるが、参考人などで20歳までは実体的に親などの確認措置を設けるという自主的運用が必要ではないか?(学校の中退問題、高額商品売買など)
いずれにせよ、教育界、法律実務家、経済界、地方公共団体、国などいろんな業界がタッグを組んで取り組んでいかないと社会的な必然性として若年成人への悪質商法被害は発生し続けることは確実でしょう。
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